この記事では、松前・檜山沖の風力発電開発の見通しと、地域にもたらす影響について考えてみます。(2025.11.20記)
人口減少や高齢化に悩む北海道日本海側──とくに松前町や檜山(江差・上ノ国・せたな・八雲)地域では、長く将来への不安を抱える地域が多くあります。そんな中、2025年夏、松前沖・檜山沖が国の「洋上風力促進区域」に正式指定されたという大きなニュースが飛び込んできました。これは単なる再エネの計画ではなく、地域振興や産業再構築につながる可能性を秘めています。
なお、2025年、秋田・新潟沖洋上風力発電事業から三菱商事のが撤退したことが話題となりました。このことより、短期的には「不確実性・遅延」が高まった洋上風力発電ですが、政府は2030〜2040年に向けた大きな導入目標を掲げており、中〜長期的には、制度の見直しや誘導策が進むと考えられます。
国は洋上風力発電を、再生可能エネルギーの主力電源に位置づけるだけでなく、地方創生の新しい切り札としても育成を図っています。とくに日本海側の風況の良さを生かした大規模導入を念頭に、2030〜2040年にかけて大幅な増強を目指しています。政府は、契約期間の延長や地域還元スキームの強化など制度面の改善も進めており、地元自治体との協調を重視している点が特徴です。
洋上風力は準備期間が非常に長い産業です。海域調査、環境影響評価、自治体や漁業者との調整、事業者選定などの工程を経るため、実際に風車が動き出すまでには10年程度を要します。
・2025年7月末
経済産業省と国土交通省は、再エネ海域利用法に基づき、北海道松前沖と檜山沖を促進区域に正式指定しました。
・2025年内~2026年春
促進区域の指定を受けて、公募(入札)に向けた指針(公募占用指針)を策定し、発電事業者を選定する公募を開始する見通し。
・2026年以降
将来的な海域利用期間の「延長方針」が政府により打ち出されており、檜山・松前沖の新規公募分から適用される可能性。現行制度(原則30年)を超える利用が認められれば、参入企業にとって採算性が向上。
・2027年以降(想定フェーズ)
参入企業が決定すれば、環境影響評価(EIA)や設計、詳細調査が本格化。これらを経て港湾整備や施工準備が進みます。
将来(2030年代)
建設フェーズに移行し、海底ケーブル敷設や風車基礎の設置など大型工事が始まる可能性があります。また、保守・運用体制(O&M)が整えば、長期的な地域雇用が創出される段階へと移行する見込みです。
洋上風力が動き出すと、沿岸自治体には次のような効果が期待されます。
建設期には港湾工事、ケーブル敷設、作業船による資材運搬などで多数の現場が立ち上がり、地元企業や労働者の参画機会が広がります。発電開始後は、運用・保守(O&M)を担うための技術者や作業員を地元で育成・雇用できれば、安定的な職が地域内に生まれます。
宿泊業、飲食業、物流・運送業など、プロジェクトに関連したサービス業が恩恵を受けます。作業船は地元港を拠点とする可能性があり、港湾・造船・船舶メンテナンス業などへの波及も考えられます。
風車設備を対象とした固定資産税、地域還元のための基金、漁業補償などを通じて、自治体財政に長期的な安定収入が見込まれます。
松前・檜山沖の洋上風力で特に影響を受けやすい自治体として、以下が想定されます:
松前町:海域中心部に近く、事業協議の中核を担う。
上ノ国町:港湾や作業船拠点として参画の可能性。
江差町:檜山沖の沿岸自治体で、漁業との共存や補償、地元還元が大きなテーマ。
せたな町・八雲町:保守拠点や港湾整備、地域参画の視点から重要。
これらの自治体は、国・事業者・地元関係者との協議体制の中で交渉力を持ち、地域経済への波及を最大化するキープレーヤーになり得ます。
洋上風力は単なる「発電産業」ではありません。むしろ、周辺産業の成長を促すことで地域の底上げが期待できます。
港湾・物流業
船舶運航・海洋作業企業
建設業(港湾工事・設備施工)
宿泊・飲食などのサービス業
再エネ関連の技術・メンテナンス事業
漁業との共存を生み出す新たな協業事業
とくに「保守拠点」が地元に置かれるかどうかは、長期雇用と企業誘致に直結する重要ポイントです。
松前・檜山地域は長く人口減少に悩まされてきました。しかし洋上風力の導入は、10年スパンで見れば地域を大きく変える可能性があります。
すぐに目に見える変化が起こるわけではありませんが、2030年代半ばには建設・準備が始まり、2037年頃からは自治体が実質的な恩恵を受け始める見通しです。
地域にとって重要なのは、「地元企業が積極的に関わり、利益を地域に残す仕組みづくり」を今から進めておくことではないかと考えられます。
洋上風力は、松前・檜山にとって“人口減少時代でも成長できる数少ないチャンス”となり得るのではないでしょうか。
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